「鈴菱家の一族 中嶋です。ノート」 1

「和希?!どうしたんだよ?!目を開けろよ、和希!!」

啓太が叫んでも、遠藤和希は目を開けず、ぐったりしたままだった。
「どうしたんだい、ハニー?」
大騒ぎしている啓太の声を聞きつけ、成瀬が啓太に声をかける。
「成瀬さん……。和希が、和希が……
混乱が収まらない啓太を宥めながら、成瀬が、啓太から事情を聞こうとした。
どうやら、和希は、啓太が来たときには、すでに、倒れていたらしい。
「和希が……死ぬなんて……
啓太がうなだれていると、寮内のメンバーが次々と駆けつけてきた。
「どうした、啓太?なんだ、泣いてんのか?誰かにいじめられたのか?」
のんきにそう言ってきたのは、王様と呼ばれている生徒会長の丹羽だ。
「状況をよく見ろ、丹羽。冗談など言っている場合ではないだろう」
丹羽をいさめるように言ったのは、女王様と呼ばれ、学園の会計を取り仕切る西園寺である。
「王様……西園寺さん……。和希が……和希が」
なおも取り乱したままの啓太を見て、西園寺のそばに控えていた七条が、口を開いた。
「殺人事件、ですね」
思いもかけない七条の言葉に、集まってきた一同は、驚いて七条に振り返る。
七条と同学年の滝は、あきれながら七条に言葉を返した。
「殺人事件?!んな、アホな」
七条は、なんの不思議もなさそうに、冷静に言葉を続けた。
「だって、遠藤くんが不自然に倒れていて、伊藤くんが泣いているんですよ。殺人事件じゃありませんか」
心なしか、嬉しそうにそう言う七条をいさめるように、西園寺が口を挟む。
「いい加減にしろ、臣。面白がっている場合じゃないだろう」
すみません、と言いつつ、七条は、まだこの状況を楽しんでいるように見えた。
「とにかく病院へ運ぶか」
丹羽が、そう言って、和希を担ぎ上げようとしたとき、寮長をしている篠宮が入ってきた。
「卓人を見なかったか?」
「寮長はん……。ちょっとは空気読んでくださいよぉ……。今、それどころや……
滝があきれたように、そう言うやいなや、中嶋が入ってきた。
「なんだ、騒々しい」
「ああ、中嶋。卓人を見なかったか?」
どうやら篠宮は、こんな最中でも、岩井のことしか眼中にないらしい。
「岩井だったら、さっき美術室に入って行くのを見たぞ」
中嶋の言葉を聞いたとたんに部屋を出ていった篠宮が、次の事件を持って舞い戻ってくるなど、想像したものは、いなかった。


「卓人が……。卓人が倒れてっ……
珍しく取り乱した様子の篠宮に、少し驚いた中嶋が声をかける。
「なんだ?岩井がどうかしたのか?」
「卓人が……死んで……
想像を超えた篠宮の一言に、一同は驚きの声を上げる。
「死んで?!」
慌てて美術室へ向かった一同。悲しいかな、和希は、そのまま放置されたままだった。

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