プロローグ 啓太×中嶋編
「七条に飲まされた薬がきれたと思ったら、風邪をひいてしまった…」
七条との一件の後、中嶋は、よほど体調が悪いらしく、フラフラと廊下を歩いている。
「中嶋さん、風邪ですか?」
見たことがないくらいに弱っている中嶋を見て、啓太は、不謹慎だと思いつつも、
嬉しそうに中嶋に駆け寄って声をかけた。
「…見ればわかるだろう。近寄るな。うつるぞ」
しゃべるのも鬱陶しいと言わんばかりに、中嶋が啓太を避けようとしたそのとき、
中嶋の身体がふらつき、倒れそうになった。慌てて啓太が中嶋の腕をつかむ。
だけならば、良かったのだが、なぜか啓太は、中嶋の両手首を右手でつかみ、
左手を中嶋のおでこに当てた。
「本当だ。熱ありますね」
「不自然だろ!その熱の測り方は!」
それは、学生会室での出来事を思い起こさせた。中嶋には、甚だ不本意であろうが、
今度は立場が逆である。
「俺だって、攻めになりたいときだってあるんです!」
なんとなく、中の人による心の声な感じも否めないが、とりあえず、
今回の啓太のご希望は「攻め」らしい。
「ふーん、面白い。では、攻めてみろ」
生肉先輩…ではなく、中嶋は、さすがに帝王、もとい鬼畜眼鏡の異名をとるだけあって、
こんな場面でも余裕をみせていた。
「赤くなってる。かわいいですよ、中嶋さん…」
「セリフと小道具が合ってないぞ、啓太…。その手に持ってる猫耳は、明らかに見当違いだ。
そして、赤いのは熱のせいだ」
「だって、お約束じゃないですか、猫耳って。七条さんにもらったんです、これ」
「会計の犬の話は、するなっ!」
さすがの中嶋も、この件に関しては、激高するようだ。
「じゃあ、中嶋さん、総受けキャラになって…」
「待て待て待て!ギアスなし!ギアス禁止っ!」
怪しい光を放ち始めた啓太の左目から、中嶋が慌てて視線をそらす。
絶対遵守の力なぞ使われて、総受けキャラになっている場合ではないのだ。
「やっぱり俺、中嶋さん相手に攻めなんて…」
あからさまに落ち込む啓太に、呆れていた中嶋だったが、啓太の鬱陶しさから
解放されたい一心で、自分の台本を渡す。
嬉々として中嶋の台本を音読し始める啓太を、怒る気にもなれず、
「…帰れ。俺はもう寝る」と言い残して、中嶋は去って行った。
・ちょっと悪ふざけがすぎたかな。
・今日の中嶋さん、なんだかかわいいな。
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