中嶋さんのプレゼントをあれからあちこち探してはみたけどみつからず、結局誕生日当日になってしまった。

「プレゼントは今日買って夜渡せばいいかな。よし、頑張って探そう」
俺は、授業が終わるのもそこそこに、教室を飛び出して、街へ出た。

しかし、なかなかこれだというものが見つからず、どんどん時間が過ぎていった。
妥協すればそれなりにはあるけれど、それは絶対にしたくない。
やっぱり、中嶋さんが喜んでもらるものじゃないと。

溜め息をついていると、不意に俺の携帯が鳴った。着信は……、中嶋さん?
「啓太、今どこにいる?」
俺は、慌てて、自分がいる百貨店の場所を告げる。中嶋さんに、誕生日プレゼントを探していることが
バレてしまわないか冷や冷やしながら言ったけれど、中嶋さんは、「わかった」と一言を残しただけで、
すぐに通話を切ってしまった。

いつも中嶋さんの電話は、突然だったから、もう慣れたはずだったのに、相変わらず俺は、びっくりしてしまう。
なんなんだろう……。
それから5分もたっただろうか。俺が中嶋さんの電話に悩む暇もなく、中嶋さんが俺の前に現れた。
「啓太、行くぞ」
「な……中嶋さん!なんで?行くってどこに?!わーっ」

それからは、怒涛のような展開だった。
美容院に連れていかれ、その次に行ったお店は、びっくりするような値段がついた
輸入品ばかり置いてあるセレクトショップだった。
そこにあった服を何着か着替えさせられ、3つ目に出された服を試着してみると、
それに頷いた中嶋さんが、「これで」とお店の人を促した。
「えっ!ちょっと中嶋さん!」
俺には、ちょっと大人すぎるぐらいのかっこいいスーツ、ぴかぴかの靴。
なんだか怖くて値段が見られなかったけど、中嶋さん、なんでこんなことを……。

何がなんだかわからないうちに、すっかりおめかしされてしまった俺を連れて、
中嶋さんが向かった先は、夜景の見えるおしゃれなレストランだった。
手際よくオーダーをする中嶋さんは、恋人の俺が言うのもおかしいかもしれないけれど、
とても魅力的だった。
「啓太、何か言いたそうだな」
中嶋さんに見惚れていた俺に、笑いながらそう言う中嶋さんは、少し意地悪だ。
「言いたいことだらけです!急にこんな美容院とか、高そうな服とか。俺、お金払ってないし!
それに今日は、中嶋さんの……」
「俺の誕生日だ」
あっさりとそう言われてしまって、俺は、一瞬、言葉を失う。

「わかってるじゃないですか……」
ようやくそれだけ口にできた俺は、中嶋さんから目線を外した。
「そうだ、だから俺の好みにさせてもらった。なかなか男前になったじゃないか、啓太」
そう言って意地悪そうに笑った中嶋さんを、俺は、まともに見られなかった。
顔が赤くなるのがわかる。何も言えず、うつむいたまま中嶋さんの言葉を、頭の中に巡らせていた。
中嶋さんの好みに……。
誕生日はプレゼントをもらうものなのに、中嶋さんは俺なんかにこんなに買ってくれて。
でも、それが中嶋さんの好みだからって言われたら、言うこと聞くしかないじゃないか。

俺は、ポケットにしのばせておいた包みを取り出した。
さっき寄ったセレクトショップで中嶋さんが手に取った、レザーを使ったシンプルなキーストラップ。
中嶋さんがいない隙に、店員さんに包んでもらったものだ。
「中嶋さん、誕生日おめでとうございます!これは俺からのプレゼントです」
「あぁ、見てたのか」
中嶋さんが、小さく笑った。俺が中嶋さんを、ずっと見ていたことを知られてしまったようで、俺は、
また顔が赤くなったような気がした。
「は……はい、結構前からプレゼントを探していたんですが、なかなか見つからなくて……」
「あぁ、それも知ってる。丹羽が、啓太がプレゼントを探してると言っていた。今日まで見つからなかった話もな」
俺は、王様に相談したことを後悔しつつ、中嶋さんが、俺のことを気にしてくれていた事実に、少しにやけてしまった。
「ありがとう。使わせてもらう」
中嶋さんが、嬉しそうに笑ってくれた。ほっとした俺に、中嶋さんは、デザートの皿を俺によこし、
時計を指して、早く食べるように促した。そうだ、寮の門限。楽しい時間は、あっという間に過ぎていた。

「あの……、中嶋さんの好みってさっき言ってましたけど、やっぱりこういう服とか大人っぽい方が好きなんですか?」
寮へ帰る道を並んで歩く。大人っぽい私服の中嶋さんと、いつもと違う雰囲気の俺。
「そうだな……。それにもう少し色気が出れば……」
「色気」と聞いて、俺は、思わず声を出してしまった。そうか、色気か……。確かに俺には……。
「冗談だ」
すっと顔を寄せられて、そのまま中嶋さんの唇が、俺の唇に触れた。
中嶋さんの唇が……

軽いキスに、ドキドキしていると、中嶋さんに、セットしてもらった髪をくしゃくしゃにされてしまった。
「そのほうが似合ってる」
「な……中嶋さん!」
「いつもの格好じゃ入りにくいところがたくさんあるんだ。いいから、朝まで付き合え」
突然の中嶋さんの言葉に驚かされるのは、いつものことだったけれど、朝までって……。
「寮に帰るんじゃないんですか?」
「誰が帰ると言った。お楽しみはこれからだ」

中嶋さんは、誕生日でも、中嶋さんだった。
これから連れて行かれるところがどこなのか、俺は、想像もできないけれど、
中嶋さんは、嬉しそうに見えた。
きっと今夜は、忘れられない夜になる。中嶋さんにとってもそうなればいいと願いながら、
俺は、中嶋さんの後を追いかけた。
Happy Birthday Hideaki Nakajima Best End

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