「Happy Birthday Scramble !」
「誕生日おめでとう!」
勢いよくクラッカーが鳴って、笑い声と共に、歓声が上がった。
本日の主役の啓太は、目をぱちぱちさせて、周りを見渡している。
「あの……、これって……」
大きな声で笑いながら近づいてきた丹羽は、啓太の肩を思い切り叩いて、
話し始めた。
「何、驚いてるんだよ、啓太。お前の誕生日を、みんなで祝おうって企画だぞ」
桜が散って、いつの間にか、新緑がまぶしい季節になっていた。
学園は、すでにゴールデンウイークに入っていたが、帰省する者も、
旅行に出かける者も少なく、寮内は、相変わらず賑やかだった。
啓太の誕生日の5月5日を明日に控え、寮の食堂の一角を間借りしての
誕生パーティーが行われている。
啓太には、全く詳細を伝えずにサプライズパーティーにしよう、
と乗り気だったのは、意外にも西園寺だった。
「しっかし、珍しいよなぁ。郁ちゃんが、こんな企画に乗ってくるなんてさ。
いつもだったら、私には関係ないって、あっさりと断るくせに」
そう言ってぼやく丹羽に、西園寺は、さも当然といったように言葉を返す。
「啓太は、特別だからな」
へいへい、と言った丹羽は、啓太に向き直り、うらやましいぜ、
と啓太の背中を叩いた。
「あ、ありがとうございます……」
恐縮しつつも、啓太は、集まったメンバーに頭を下げて、
一人一人に笑顔を向けた。
「ハニーのために、一生懸命作ったよ」
そう言って、成瀬が出したのは、真っ白なクリームの上に、色とりどりの
果物が鮮やかに飾られているケーキだ。その大きさは、ここに集まったメンバーだけでは
消費しきれないほど大きい。
「由紀彦ぉ、これは、ちょっと張り切りすぎなんちゃう?」
「そうですよ、成瀬さんっ!そんなに誰が食べるんですか?」
成瀬が作ってきたケーキを指差して、呆れたようにそう言った滝と遠藤だったが、
そう言った滝も、手に大きな袋を持っていた。
「俊介こそ、そんなに大きな荷物持っちゃって。それもハニーのお祝い?」
よくぞ聞いてくれたとばかりに、滝は自慢げに袋を掲げた。
「さっき焼いたばっかりやで、これ。俊介ちゃん特製たこ焼き、愛情大サービス増量中や!」
にこにこと、啓太に袋を渡そうとする滝の腕を、横から掴んだ丹羽が、
話に入り込んでくる。
「そんなおやつは、後でいいんだよ!俺が、バッチリ大漁だったんだから、
そっちを先に食わねーとな。篠宮が料理してくれたから、鮮度も味も保障付きだぜ」
料理上手で知られる篠宮は、啓太に優しく笑いかけた後、いちいち大騒ぎをしている丹羽に、
寮長らしく言葉をかける。
「丹羽、あまり騒ぐな。伊藤が、びっくりしているだろう」
篠宮に諌められて、一旦は、はいはい、と返事をした丹羽だったが、すぐに啓太に
向きかえって、はしゃぎはじめた。
「ほら、啓太も驚いてないで、楽しめって」
ありがとうございます、と慌てて頭を下げた啓太は、丹羽の指摘通り、心の底から
楽しんでいるようには見えなかった。それは、驚きだけによるものではなかった。
丹羽、西園寺、篠宮、成瀬、滝、遠藤。それに、いつもはこういった賑やかな催しには
参加しない岩井の顔も見えた。こんなに大勢に祝われていて、本当に嬉しいはずなのに、
啓太の心が晴れないのは、いつもいるはずの、中嶋と七条がいないことだった。
<この先のお話>
中嶋と七条がいない中で行われた啓太の誕生パーティー。
楽しい時間を過ごす啓太だったが、沈んだ心を隠せずにいた。
パーティーが終わって、寂しい気持ちを抱えたまま、
ぼんやりと時を過ごしている啓太の元に……。
共通のプロローグの後に、中嶋×啓太と七条×啓太の
2つのお話が用意されています。どちらも、啓太が幸せな方向で。
どちらでも、お好きな方を読んで楽しんでいただければ幸いです!
offlineに戻る。